張りぼての夢
不思議な夢。私が存在せず、誰か年長(そうでなくても目上)の者が、小さい者に語りかけるような口調の声がする。二人ともその姿は見えないが。声とその反応だけがわかる。
私は、ちょうどゲームや映画のカメラのように自由に動き回る視点として機能する。夢の場所は日本と中国の混ざった、オリエンタルな感じの非常にごちゃごちゃとした繁華街と都市。
賑やかでとても人が多い。古くて怪しい両替店や、高級ブランド店、超高速のリニアモーターカーのような施設が混在する。そこの街中を高速で視点が動き回る、空へ移って街を俯瞰したり、遠くに焦点があったりする。
声がして、街の北の大きな黒い塊の反対側にある隣街へ、視点が一時固定される。その黒い塊は夜の湖らしかった。『向こう側に灯りと建物がたくさん見えるだろう、あれは飾りなんだ。』視点が湖の上空に飛び上がり、灯りに急速に近付いていく。近づいてみると、それは書き割りのようなハリボテで、点在する灯りも単なるランプだった。『ただの背景なんだ。そこに人が住んでいるわけじゃない。遠くから見たら街に見えるだけなんだ。』『なぜそんな物があるのですか。』『広い世界を演出するためだ。』視点がまた勢いよく動いていく。街の雑踏、人々の間を駆け抜ける。リニアモーターカーとすれ違ったりしながら、最後には一気に上空へ行く。
はるか上空から街を見下ろす。すると、街が集まっているのはごく一部分で、周りには何も無いことがわかる。草木や陸も海も何もない真っ黒の虚無。例えるならゲームの中では直接行けない場所、遊んでいると見えない場所のような感じだ。『世界中にそのような場所があるのですか。』『そうではないよ。世界はここだけなんだ。君や他の者たちは、この街が世界の一部分だと思っているね。』視点が上に向く、月のようなものへ向かっていく。そしてすぐにそこへ到達する。板切れのような発光する月がそこにある。近づくと通り抜ける、振り向けばさっきの月。平面をこちらへ向け続けているだけで、球体ですらない。『逆なのだ。世界はここにしかない。この街から遠くに見えているものは、世界を演出するための飾り物なんだ。』『でも、他の街や国の話を人はしますよ。彼らはどこから来たのですか。』『そう思っているからね。』その後は覚えていない。不思議な気持ちになった。
